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【第7回 カートイズミーティングin浜松限定】日産 スカイラインGT-R M-spec Nür (R34) ミレニアムジェイド [限定モデル]

Model
Nissan Skyline GT-R M-spec Nür (R34) Millennium Jade

Model No.
#8356
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2002年1月24日、日産はこの年の8月を以ってR34型GT-Rの生産終了を発表しました。これは「平成12年排出ガス規制」に適合しない車種の継続生産の猶予期限が切れることによるもので、同時に最終特別限定車となる「Nür (ニュル)」がM-specとV-specⅡに追加設定されました。
※「M-spec Nür」(車両価格:630万円)、「V-specⅡ Nür」(同:610万円)

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「Nür」仕様の大きな特徴は、何といってもそのエンジン。高い耐久性を誇るN1仕様のRB26DETTエンジンをベースに、ピストンやコンロッド組付け時の重量バランスの均一化を図り、量産エンジンとしては異例の高精度バランス化を実現。高回転域において、よりスムーズな回転フィーリングが得られるエンジンへとリファイン。専用のゴールドヘッドカバーの採用や、エンジンルーム内コーションプレートもゴールドとすることで、見た目にも特別な仕様のエンジンであることを演出。
さらには、フルスケール300km/hの専用スピードメーター、立体成形の専用グレードネームエンブレムの採用、またNür専用の特別塗装色としてミレニアムジェイドが設定されました。

なお、「M-spec Nür」はベイサイドブルーを、「V-specⅡ Nür」はシリカブレス(M-spec専用特別色)をカラーオーダーすることができませんでした。同じGT-RでもM-specとV-specⅡでは目指すべきクルマの方向性が異なっていますので、各々のグレードイメージを崩さぬようにとの配慮からカラーオーダーに制限があったものと考えています。

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当初、両グレード合わせて300台限定販売の予定でしたが、東京オートサロン会場でのお披露目以降(1月上旬)、新聞や雑誌などでも大きく取り上げられ、問い合わせが殺到。急遽500台に増産が決定したものの、それでも予約希望数に対応できないため、通常ラインナップのGT-R生産枠を限定車「Nür」の生産に充当する形で、最終的には1000台の生産が決定。発表日の1月24日には即日完売(発売日は2月26日)するという、第二世代GT-Rの劇的なラストを飾りました。

(日産自動車が保管所有するミレニアムジェイドのM-spec Nür)
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モデル名である「Nür」は、第二世代GT-Rが鍛えられたドイツ北西部にあるニュルブルクリンク・サーキット(Nürburgring)に敬意を表して名付けられました。1周が20.832km(北コース)、アップダウンが激しくその高低差はおよそ300m。超高速から超低速まで180を超える多種多様なコーナーが存在し、しかもその多くがブラインドコーナー。コース幅は狭く、路面は波打ち滑り易いといった過酷な条件が揃っており、世界屈指の超難関コースとして知られています。

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車両の総合的な性能がタイムに反映しやすいコースであることから、スポーツカーをはじめとする高性能乗用車の多くがこのコースで開発テストを行っており、お膝元であるBMWやポルシェはもちろんのこと世界の著名な自動車メーカー、最近では日本のメーカーも数多く見受けられます。今でこそ多くの日本車がこのコースに持ち込まれテストされていますが、1980年代当時の日本車で、ここニュルで開発を行っていたクルマはGT-Rくらいしか見当たりません。

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第二世代GT-Rの開発担当ドライバーであった加藤博義氏は、「初めてニュルにクルマを持ち込んだ時は、1周もロクに走れなかった。」と当時を回顧しています。日本でそれなりに造り込んできたクルマが、ここニュルでは全く通用しない。小手先では通用しないクルマ造りが要求されました。今なお名車の誉れ高いBNR32に始まる第二世代GT-Rが、ここニュルブルクリンクで鍛え上げられたのは紛れもない事実でした。

ちなみに余談ですが、開発初期のBNR32テスト車両は、ボディーデザインがまだ決定していないことも影響したのでしょうか、S13シルビアのボディーパネルが偽装されていたとのことです。

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「M-spec」は、乗り心地と上質感を重視した「大人のためのGT-R」という位置づけで、「V-spec」系グレードがサーキットでのタイムアタックを重視したモデルに例えるなら、M-specは「耐久レースのように数十周、数百周を重ねて、結果的にトップのポジションで駆け抜けることができるようなチューニングを施したモデル」であると日産は位置づけています。

M-spec専用に開発されたリップルコントロールショックアブソーバーは、特に公道では頻繁に感じる路面凹凸などの微小ストローク域にて高い振動吸収性を示す効果があり、公道走行における「接地性」を高め、結果として大きな「安心感」が得られる”しなやか”な足回りとなっていました。とは言っても、そこはGT-R。セダンのような柔らかさとは全く異質の”しなやかさ”であることをつけ加えておきます。

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また、一脚ごとに手縫い&張り込み加工を施したGT-R刺繍入りの専用本革シートも衝撃吸収性を高めた仕様となっており、前席にはシートヒーターを装備。ショルダー部には滑りにくいバックスキン調の高級生地「エクセーヌ(アルカンターラの旧称)」を採用。複雑な曲線をもつGT-Rのシートに本革をしっかりフィットさせるため、熟練した職人でさえ月に100脚、50台分を造るのがやっとという希少性の高い逸品が装備されていました。

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乗り心地、そして内装に至るまで、これまでの「速さ」を追求した方向性とは異なったアプローチの、まさに「大人のGT-R」と呼ぶにふさわしい仕上がりのM-spec。このM-specを総合プロデュースしたのが、かつて日産の「グループCカー」や「ル・マン24時間耐久レース」にて監督を歴任した、何を隠そう現行R35型GT-Rの開発総責任者でもある水野和敏氏。グローバルカーとしての使命を担う新世代GT-Rのコンセプトは、すでにこのM-spec開発段階から水野氏の頭の中にあったのかもしれませんね。

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今回ご紹介するGT-Rは、「第7回 カートイズミーティングin浜松」限定のhpi-racing製1/43「日産 スカイラインGT-R M-spec Nür (R34) ミレニアムジェイド」です。
一般店頭およびその他会場、Webでの販売も一切無い、完全な会場限定販売モデル。限定数200とありますが、実際は200にも満たない準備数だったようです。

(会場に掲示されていた告知ポスター。掲載モデルは試作品で、ウインカーの色など再検証が必要な開発段階)
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実際のモデルでは後期型R34の特徴でもあるクリアウインカーが装着され、リアテールの「M-spec Nür」エンブレムおよびGT-Rエンブレム、日産IDエンブレムにはエッチングパーツを使用。ステッカーやタンポ印刷とは異なる立体的な表現力は更なるリアリティーを生み出しています。Nür専用カラーであるミレニアムジェイドも鮮やかで、実車に近い綺麗な発色を再現しています。

(ゴールドっぽく写ってしまいましたが、実際はもう少しグリーン調です)
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全体の雰囲気やバランスは他社同型モデルに比べてより実車に近い完成度。実車ノーマルカーと比較すると車高が下がり気味で、ホイールも実寸法に換算すると19インチなんじゃないかと思うほど大きめですが、特に違和感は感じません。
個人的な感想を言えば、今回のようなノーマルカーはもう少し車高を上げても良かったんじゃないかと思います。新車卸したてのノーマルカーらしく、ちょっと腰高気味に。(あまり上げ過ぎると格好悪くなってしまいますが・・・)
その方が、今後登場するであろう車高の低いチューニングカーとの比較が楽しめて、メリハリが付くんじゃないかと。

(正面から。NACAダクトの無いアルミボンネットが特徴のM-spec。実車と見まごう完成度です)
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(バンパーに彫り込まれた「SKYLINE」ロゴおよびキーシリンダーのサイズに少々違和感を感じますね…)
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(ノーマルカーは車高上げ気味でも良かったんじゃないかと思います。まぁ、これはこれでカッコイイんですけどね…)
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(純正ホイールがフェンダー内に入り込んで”ツライチ”感が出てないあたりは、ノーマルカーらしくて好印象です)
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M-spec専用本革シートのデザインもきちんと再現しており、エクセーヌを使用したショルダー部の輪郭形状、ヘッドレストに刺繍されたGT-Rロゴも、小さいですがきちんと刻印してあります。細かいところですが、こういった拘りはマニア心をくすぐりますね。300km/hフルスケールメーターについては、目盛りが細か過ぎて確認できておりません。

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なお実車のM-specですが、シートヒーターが内蔵されていることもあり、バッテリーが強化されている寒冷地仕様車がベースとなっていました。寒冷地仕様車の場合、サイドミラーにもヒーターが内蔵されていたり、目に見えるところではワイパーデアイザー(フロントガラス下部に熱線ヒーターがあり、ワイパーが凍結固着するのを防ぐ装置)などが装備されています。細かいところですが、こういった他グレードとの差異ポイントをミニカーで見つけると、「よく(実車を)検証してるな~」と感心してしまいますね。

残念ながら今回のM-spec、さすがに[exclamation&question]ワイパーデアイザーまでは再現しきれなかったようです。

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生産数200の極少量ロットですから、¥12,000と少々割高になってしまうのは致し方ないところ。今回、このモデルを企画された担当者様にお話しを伺う機会がありましたが、このモデルが日の目を見るまでの道のりは、非常に大変だったようです。何度も企画が頓挫しそうになったと、仰っておられました。

少量ロットでの生産に対応して頂けるようメーカーとの交渉、日産のライセンス部門や「浜松市制100周年記念」を冠するためのお役所との打ち合わせ等、「製造元であるhpi様、日産自動車様、浜松市、そしてカートイズミーティング開催事務局の協力がなければ実現できなかったモデルです」と力説されておりました。そしてまさに、この担当者様のご尽力なくしては存在し得なかった「M-spec Nür」なわけです。

(カーボン台座の採用も、担当者様のこだわりです)
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同封のスペックシートは担当者様の自費製作品。記載内容やGT-Rロゴに至るまで、実車カタログを参考に日産のライセンス許諾を受けて製作したシートだそうです。沢山の文字が並ぶスペック表、小さな文字でもはっきり読めるようにとの配慮からオフセット印刷を採用したそうですが、コスト高は免れなかったそうで・・・

好きで始めたご自身のこだわり、日産ライセンス部門と何度もやり取りしながら完成にこぎつけたそうです。たかだか「紙切れ1枚」と言えばそれまでですが、担当者様のモデルに対する熱い想いの詰まったスペックシートです。

(「購入整理券」もご担当者様のお手製でしょうか?モデルと一緒に保管します)
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ところで、個人的に一番気になったのは、どうして限定モデルに「M-spec Nür」を選んだのか?ということ。

お伺いしましたところ、まず第一に製造元であるhpiの販売予定モデルと重複しないこと、そして限定モデルとして販売する以上、車種・数量を含めモデル自体に希少性を持たせたい、最後に担当者様ご自身いつかは所有したいと憧れる車種であったこと、が決め手となったそうです。第二世代GT-Rの集大成ともいえるBNR34の中でも、最も高額で最上級グレードに位置した「M-spec Nür」、いつかは僕も所有してみたい1台です。

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今回のイベントや「M-spec Nür」に対する満足度はもちろんですが、限定モデル製作の舞台裏をほんの少しですが垣間見ることができ、より一層このモデルに対する愛着が湧きました。来年度以降もこのイベントがより一層活性化するとともに、継続して「GT-R限定モデル」が登場することを願いつつ、締めくくりたいと思います。

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「独断と偏見」によるモデル評価

・プロポーション:★★★★★
 BNR34モデルとしては、現在最高峰に位置するモデルでしょう。
 Nür専用カラーであるミレニアムジェイドの発色も申し分なし。

・レア度:★★★★☆
 限定数200にも満たない超希少モデル。hpi製R34のフルコンプリートを目指すなら、絶対に外せないモデル。

・プレミア(相場):★★☆☆☆
 元々が高額なレジンモデルですので、現在のプレミアはこの程度。
 本当に欲しい人の手に行き渡ってしまえば、今後市場に出回る機会は減ってくるでしょう。
 
※ご参考まで…
 現在の平均相場:「当時の定価」×「の数」


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<ご注意>
本ブログの内容は、筆者の独断により記事化しております。事実と反することや間違いがあるかもしれません。そのような観点からも、本内容についてメーカーさんへの問い合わせはご遠慮ください。その点をご理解の上、楽しく読んで頂ければ幸いです。

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kenken

はじめまして。
遊びに来ました(^ ^)
すばらしいっ記事ですね。
私のブログと違って、実車とモデルカーについての解説・解析が
ものすごく詳細で楽しませて頂きました。
丁寧な仕事が伝わってきます。
また遊びに来ます。
ちょっと今から他の記事も拝見しますねm(._. )m
by kenken (2011-10-22 08:26) 

GT-Rマニア

kenken さん

ご訪問ありがとうございます。

もちろんミニカーも大好きなんですが、諸々の理由から実車の方にもこだわりがありまして…

ついつい調べ過ぎて、毎回ボリュームいっぱいになっちゃってます。
GT-R実車オーナーの方からは内容がマニアックだと好評なのですが(笑)、ミニカーコレクターの方はどう思われているのか、非常に気になるところです。

よろしければ、ぜひまたいらして、ご感想お聞かせ下さいませ。
今後とも宜しくお願いいたします。

by GT-Rマニア (2011-10-23 01:18) 

S

あ~、webCGの過去記事他パクリなのが残念
自分自身の言葉で表現しましょうよ
by S (2011-12-04 19:14) 

GT-Rマニア

S さん

コメントありがとうございます。

記事化に際し、所有しているカタログや文献を参考にしておりますが、特に固有名詞や固有スペック、メーカー様のコメントや見解などは私の思い過ごしや意訳で読んで頂いている皆様に少しでも歪んで伝わらぬよう、敢えて原文のままで載せております。

メーカー他社様の言葉と私の言葉を上手く区別して表現できるよう、記事推敲を重ねていきたいと思います。

貴重なご意見ありがとうございました。
より充実した記事内容にすべく、今後ともご意見宜しくお願いいたします。

by GT-Rマニア (2011-12-05 13:47) 

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